無口な彼が残業する理由 新装版
「僕は、先程の方のように明確で大きな目標を立てるのが苦手です。しかし、細かい目標を立て、実行していくのは得意です。だから、例えば彼女の企画が成功するようにサポートしたい」
集団面接の時の彼の回答に、
面接官は顔を歪ませた。
「随分、消極的なんですね」
「はい。実は僕は、あまりツイていない男なんです」
「ツイていない?」
「ええ。僕が欲張ると、全てが上手くいかなくて。二兎を追うと一兎をも得ない典型と言いますか」
就職がかかっているのに、
自分を卑下するようなことを口走る彼が不思議だった。
「なるほどね」
「でもその代わり、一つのことに集中出来れば確実にこなしてみせます。だから、大きな目標を持つ人の、小さなステップアップをお手伝いする方が向いていると思います」