無口な彼が残業する理由 新装版
大阪に来た日と同じように、私たちはまず荷物をコインロッカーに預けた。
バスセンターで一日乗車券を買って、
情報誌を見ながらバスを乗り継いで……。
「おい、バカ。そのバス逆方面だぞ」
「えっ? うそ」
「そこに行くならあっちのバスだ」
私の方向音痴がバレた。
大阪では携帯の地図アプリを頼りにしてたから
迷うことはなかったのに。
頼りの携帯は、電源を切った状態で鞄の奥に眠らせている。
「ったく、迷子になるなよ」
私が見ていた情報誌を取り上げられ、
青木が目的地まで誘導してくれる。
「ならないもん」
「どうだかな」
そう言えば出発の時、
「少しは意識しろ」
なんて言われたっけ。
……ううん、してないけど。