無口な彼が残業する理由 新装版
「きゃっ……!」
下り坂でつまづいたけれど、
青木が支えてくれて転ぶには至らなかった。
このまま転んでしまえば良かったのに。
体に傷ができれば、心の痛みはきっと中和される。
「しっかりしろ。お前、普通じゃないぞ」
「普通だよ。ちょっと気分が良くないだけ」
「嘘つけ。何があった?」
何もないよ。
ただ、見てしまっただけ。
「ねえ、青木」
私は泣き出したりしないように、
ぐっと顔に力を込めた。
「私のこと、好き?」
「は?」
「私のこと、好きか聞いてるの」