無口な彼が残業する理由 新装版

観光客の流れる、清水寺の下り坂。

土産屋がたくさん立ち並ぶこの通りで、

私たちはきっと、痴話ゲンカ真っ最中のカップルにでも見えているだろう。

青木は呆れた様子で私の頬に触れて、

「好きだよ」

と答えてくれた。

「私さぁ、思うんだ。私さえ青木が好きだったら、全部うまくいくんだって」

「はぁ? 意味わかんないんだけど」

堪えていても、容量オーバーの涙は目に溜まってしまった。

「私、青木のこと好きになる」

青木は喜ぶような顔は一切せず、

ただ困惑した顔で私の頬を撫でた。

「丸山くんと別れて、青木のこと好きになる」

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