甘恋集め
「姉さんが妊娠を望んでいて、病院に通っているのも知ってるけど。
おじさんは、無理しなくてもいいっていつも姉さんの体への負担を気にしてた。巧さんと姉さんが幸せな毎日を過ごしていればそれで十分だって何度も聞かされたし」

感情をこめないあっさりとした口調のとしくんは、泣いている真里さんにため息をついてみせると。

「で?体は大丈夫なのか?無理してないの?子供が欲しくてたまらないのはわかるけど、自分の体に無理させるのはまずいだろ」

巧さんが、としくんを目で制した。

これ以上、話すな、そんな気持ちが伝わる。

「だって、無理しなきゃだめなんだもん。一生懸命治療しないと、赤ちゃんに、会えないもん。無理しなきゃ、無理してでも……私、赤ちゃん抱きたい」

真里さんの涙交じりの言葉が、部屋に響く。

巧さんは、そんな真里さんの背中を撫でながら、彼女の気持ちを落ち着かせようとしている。

「真里が望むのなら、無理してもいいんだ。それで体調を崩しても俺が支えるから。でも、もう無理したくないって思えば、いつでもやめていい。
俺は、真里がしたいように、頑張ればいいって思ってる。
父さんのことも、利也のことも、関係ない。真里の思うがままに、無理していいから。……どんな真里だって、俺がちゃんと愛してやる」


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