甘恋集め


混み合うお店の中、奥へと案内されながら歩いていた。

会社帰りの人も多く、店内はかなりうるさくて明るい雰囲気。

カウンターの向こうにある座敷に通される事になった私達は、一列になって向かっていた。

満席のカウンターに座っているお客さん達の背にぶつかりながら、どうにか歩いていた時。

突然ぐっと腕を掴まれた。

瞬間、引き寄せられた私は、両腕を固定され、身動きがとれない。

驚きで声が出ない。何が起こったのかわからないまま、私の両腕を拘束している……その人を見上げると。

「この香りを探していた」

少し息があがっている必死な顔。

記憶の中にあるよりも大人になっていた顔が、私の目の前にあった。



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