コイン★悪い男の純情
 「本当にいいのか。約束は必ず守るけど」

 「決まりやな。今度逢う時に現ナマを用意したるわ。うちな、見合いパーティの始まる前からあんたに目をつけとってん」
 「ええ、どうして?」

 「うちの好みのタイプやねん。マスク、筋肉質の体、知性、それにテクニック。あんたはうちには超サラブレッドや」


「俺がサラブレッドか」


 「そや、あんたみたいな男はもう絶対に捜されへん。うちのもんにしたいんや」

 「俺も君の事が気になっていたよ」
 「ほんまか」
 「うち、超嬉しいわ」

 そう言うと、絵美は純一を力いっぱい抱き締めた。
 純一も絵美を形式的に抱き締めた。


 (900万円でも良かったかな)


 純一は壁を見詰めながら、算盤をはじいていた。
 

 純一は、あれから3日目に絵美に公衆電話から電話を入れた。

 「もしもし、芝です」
 「絵美やけど。今度はえらい早いな。前は8日もほったらかしといて。やっぱり、お金はモノ言うな」

 「それなら、もっと後から電話を入れるとしよう。では、ま・・・」

 「ちょい待ち。冗談やんか。あほ!お金の力でも、何でも、うちはあんたの声が、はよ聞きたかったんや」

 「俺も同じだ。お金を借りるなんて言わなければ良かった。あの話は・・・」

 「冗談や言うてるやろ。そいで、いつ逢えるん」
 「明日の予定は」

 「待ってや・・・OKや。お金もそれまでに用意しといたるわ」
 「済まない」

 「あんたとうちの仲やないの。水臭い事、言わんといて」
 「じゃ、午後7時草月の前で」

 「めちゃめちゃ、楽しみにしてるわ」
 「じゃ、明日な」

 「待ってん!」
 「プップップッ」

 「待て! 馬鹿たれ芝生!!」

 あくる日の7時前、純一は黒のバッグを持って、草月の前で絵美を待っていた。


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