コイン★悪い男の純情
 「連絡できへん。あの馬鹿は何で電話してけえへんねんやろ」

 絵美は社長室の一輪挿しを壁に投げ付けた。


 ガチャン!!


 その時、携帯に公衆電話から電話が入った。電話の相手は純一だった。

 「もしもし芝です」
 「あんた、8日もうちをほったらかして、何してんのん」

 「悪い。ついつい忙しかったもんで。今日は逢えるか」

 「ちょっと待って。予定表を見るわ。ああ、大丈夫や」

 「じゃ、7時、前の草月の前で」
 「ああ、わかったわ」

 二人は7時に草月の前で逢った。


 5番街で二人は体を重ねた。


 上機嫌の絵美が、帰り支度をしている純一に、微笑みながらベッドから話し掛けた。

 「あんた、うちのパートナーになれへん」
 「パートナー?」

 「共同経営者や。京都と神戸の店の面倒見て欲しいねん」

 「共同経営者か。いい話だな。実は、俺も事業を始めようと思っている所なんだ」
 「それ、もう始めてるん」

 「まだなんだ。資金が少し足らなくて、いま資金集めで忙しく走りまくっているんだ」

 「幾ら足らへんの」
 「1200万円は集めたんだけど、800万円がどうしても集められなくて」

 「なあんや、それだけでええのんかいな。それ位ならうちが出したるわ」
 「それは出来ないよ。俺が何とかしてみせるよ」

 「水臭い事言わんといて。その代わり条件があるわ。その仕事がうまく行かなくなったら、100パーセントうちのパートナーになりや」

 「100パーセント?」
 「せや、その意味はわかるやろ」

 「ああ、まあな」
 「そんならお金は任しとき」

 
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