コイン★悪い男の純情
29話 死刑

 淳也はかんなの家を出た。

 その時、かんなは不服そうな顔をして呟いた。


 「何で家を出る必要があるの」

 「勇太君が死んで、夫婦でないものがいつまでもこんな形で生活するのも不自然だし。一度、この家を出て、もう一度考え直したいのだ」

 「また、結婚詐欺まがいの仕事がしたくなったの」



 「それは、無い」



 「ああ、そう。それやったら、あんたの好きにしたら」


 淳也はそれから大阪のビジネスホテルを転々とし、時を計っていた。

 かんなの家を出てから1ヵ月後。


 以前、かんなの携帯から書き写した前崎の電話番号を書いたメモを、淳也は取り出した。

 淳也は前崎に電話をすると、かんなが危篤と嘘を付いた。そして、前崎を夜の8時にかんなの家の前に呼び出した。



 8時前に前崎が車でやって来た。




 
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