コイン★悪い男の純情
 「勇太と私を離すなんてえ。ひどいわ。許さへん。淳也さんを絶対に許さへん。ううううう」


 かんなはそう言って泣き続けた。


 「絶対に許せへんから・・・」

 
 「・・・」


  
 辛辣な言葉を淳也に浴びせていたかんなが、おとなしくなった。


 「吉見さん、許してやってね。気持ちが高ぶっているだけだからね」

 「わかっています。僕でよかったら、幾ら当たってもらっても結構です。それで、かんなさんの痛みが和らぐなら」

 「吉見さん、ありがとう」
 「かんなさん、おとなしくなりましたね」

 母親はかんなを覗いている。


 「あらっ、おとなしくなったと思ったら、かんなはグ~グ~いびきをかいて寝てるわよ」

 「きっと、夢の中で僕に当たったのでしょう」
 「そうかもしれませんね」


 二人は顔を見合わせて笑った。

 

 かんなは健康が回復すると、病院を退院した。

 母親の奈津子も神奈川に帰った。


 かんなは退院してからも、相変わらず元気が無かった。




< 141 / 162 >

この作品をシェア

pagetop