コイン★悪い男の純情
 「仕方ないな。少しだけですよ」

 渋々、淳也が部屋の中に入った。
 
 部屋に入ると、小さな食卓テーブルがあり、その上にウイスキーの瓶と、水割グラスがあった。


 「吉見さん、水割りでいい?」
 「じゃ、一杯だけいただきます」


 小枝は新栄町のスナックで働いていた。


 「私ねえ、九州は好きなのよ。食べる物もおいしいし、人間もいい人が多いしね」
 「へえ、そうなんだ」

 「でも、ひとつだけ我慢ができない事があるの」
 「それって、何ですか」

 「言葉よ。あの訛りだけは、どうも好きになれないの。関西弁もそうだったけど、こちらはもっとよ」

 「北条さんは、もともと関東の人ですか」

 「吉見さんもそうでしょう」
 「えっ、まあ」

 「吉見さんて標準語でしょう。私、吉見さんと話をすると、ほっとするのよ。

 「西鉄バスに乗るじゃない.。車中が方言まるだし。私、圧倒されちゃって」

 「僕は気にならないですね」
 「あっ、吉見さん、もう一杯どう?」

 「もう、結構です。用事がありますので、これで失礼します」


 淳也は帰ろうと思い、立ち上がった。


 小枝はいきなり淳也に抱き付いてきた。










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