コイン★悪い男の純情
 100円硬貨ばかりを渡したので、店員は不思議そうな顔をしていた。

 
 「ジョッキの中の100円玉は勇太君にプレゼントしようと思っていたけど、恐竜になってしまったな」


 フィギュアの入った紙袋を手に提げながら、淳也は苦笑していた。



 三池にあるアパートに帰りドアを開けようとしていると、隣の部屋に住む北条小枝がドアを開けた。


 「あら、吉見さん、お久し振り」
 「今晩は。今日は休みですか」

 「ズルよ。余り、気が滅入ったので休んだのよ。時々やるのよ」
 「いやな事でもあったのですか」

 「いやなことばかりよ。あっ、吉見さん、今ひとりで飲んでいる所なの。一緒に飲まない」
 「今日は遠慮しときます」


 「そんな事言わないで、付き合ってよ」


 小枝は、むりやり淳也の手を引っ張って部屋の中に引き入れた。







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