コイン★悪い男の純情
 真美恵はあれから1週間、ずっと携帯電話を眺めていた。必ず、芝は電話をしてくると思っていたのに、電話は掛かって来なかった。

 (何でや。私の方が芳恵よりもずっと美人や。体つきやスタイルも絶対に負けてへん。せやのに、何で電話をせんのや。あほ!芳恵を選んでみ~。殺したる!)


 
 ガッチャン。


 
 芳恵のコーヒーカップを、真美恵は思い切り床に叩き付けた。

 コーヒーの飲み残しと、割れたコーヒーカップの破片が床に散乱している。

 真美恵は荒れに荒れていた。



 日曜日。
 朝から芳恵は真美恵の動きに細心の注意を払っていた。

 真美恵がトイレに入ると、普段着のまま大急ぎで芳恵は家を出た。

 紙袋の中にお気に入りの服を入れ、後で着替えるつもりにしていた。

 梅田に着くと、芳恵は着替えを済ませ、普段着をコインロッカーに預けた。途中、何度も振り返ったが、真美恵はつけていなかった。

 12時前に梅田に着いたので、芳恵は食事やウインドーショッピングで時間をつぶした。

 芳恵が待ち合わせ場所に行くと、芝はすでに来ていた。芝の腕には、ショッピングバッグがぶら下がっている。


 「お待たせしました」
 「いいえ、僕も今来た所です」


 そう言って、純一は真美恵がいないか左右をキョロキョロ眺め回した。

 
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