コイン★悪い男の純情
 「ううん、うんうん、ううううっ」

 かんなは淳也の胸で、涙をポロポロ流して泣いている。

 淳也はかんなを思い切り抱き締めた。


 「どうして私なの?」


 「お袋が糞尿だらけの時、かんなさんの介護の仕方を見て、結婚するならこの人だなと、直感しました」

 「それなら、吉見さんにお礼を言わなくちゃ。そして、もっと、便を垂れ流してと頼もうかしら」

 「それだけは、勘弁して下さい」
 「まあ、淳也さんたら」


 「じゃ、かんなさんはどうして僕を」

 「前の亭主は暴力で泣かされたわ。だから、男の人は怖くって。もう、結婚なんかするものかと思っていたの」

 「それが、なぜ?」

 「吉見さんの介護を手伝う淳也さんを見て、男の人にもこんな優しい人がいるんだって。この人ならやっていけるかなと思ったの」


 「ウンチが取り持つ縁か」


 「ウン!」

 「えっ、かんなさんって、そんなだじゃやれを言うんですか」

 「ウン!吉見さん、びっくりするわよ」

 「お袋、ウンと喜びますよ」

 「まあ、淳也さんたら」

 かんなは淳也の言葉を噛み締めていた。

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