コイン★悪い男の純情
 「怖くないか」
 「すげえ~。すげえ、高いなあ。おっちゃん、僕、怖ないで」

 「勇太、大丈夫?」
 「大丈夫や」

 「かんなさん、迷子センターに電話をして下さい」
 「そうそう、電話しなくっちゃ」

 かんなは、迷子センターに携帯で電話をしている。

 「わあ~い。わあ~い」
 
 勇太は肩車に乗って、はしゃいでいる。


 「僕、おっちゃんが大好きや」
 「そうか。おじさんも勇太君が大好きだ」

 「おっちゃん、頼みがあるねん」
 「何がして欲しいのだ」



 「おっちゃん、僕のお父ちゃんになってくれへん」



 勇太はこれまで、お母さんをママ、お父さんをお父ちゃんと呼んでいた。


 「よし、おじさんが勇太君のお父ちゃんになってやる」


 「ほんまやで~」
 「本当だ。男の約束だ」

 「やった~。わあ~い。わあ~い。わあ~い」

 「勇太。どうしたの。何か、いい事でもあったの」


 電話を終えたかんなが、勇太に尋ねた。



< 75 / 162 >

この作品をシェア

pagetop