コイン★悪い男の純情
 「おっちゃんと男の約束をしてん」
 「何を約束したの」

 「あんな~。おっちゃんが僕のお父ちゃんになってくれるねん」
 「まあ、勇太のお父ちゃんに」

 「男の約束してん。ママ、嬉しいやろ。おっちゃん、ハンサムやもんな」

 「まあ、勇太ったら。そうよ。おじさんが勇太のパパになってくれるのよ」

 「パパやないで、お父ちゃんやで。嬉しいな。嬉しいな」
 「勇太、良かったね。お父ちゃんが出来て」

 3人はそれぞれの心の中で、ひと足早く家族になろうとしていた。



 淳也は考えていた。


 (かんなさんの家族になる前に、今の仕事を清算しなければ)


 先日、仕事を失敗した時にも、脳裏の片隅でそろそろ引け際かなと、淳也は思っていた。

 かんなさんとこうなった以上、今の仕事を続ける事は出来ない。

 勇太君のためにも、お袋のためにも、今の仕事から離れる必要があるだろう。

 (次の仕事で最後にしょう。最後の仕事をバッチリ決め、花道を飾って、おさらばしよう)

 淳也は決心が付いた。

 並んで歩くかんなを淳也は見た。


 かんなは、幸せそうな優しい優しい顔をしていた。






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