らくがき館
君を描く
相性が悪いのだ。

とても。







もう10年の付き合いになる。
その間、二度、別れた。
一度目はあいつから、二度目は俺からだった。
お互い、嫌いになったからじゃない。
むしろどうしようもないくらい好きなのだ。

大人になって考えれば、依存に近い気がする。
幸せになってほしいと思う。
だけど自分が幸せにできる自信はあまりない。
学生の頃はあれほどまでに自信に満ちていたというのに。





 デザイナーの勉強のために単身フランスに留学した俺に、あいつは尊敬の眼差しを向ける。

 学生のころからそうだった。
 天才だなんだとチヤホヤされ、それなりにモテて、自分自身はあまり気にはしていなかったが取り巻きが多いのと同じくらい妬みと嫉妬があった。
 そんな中でもまっすぐに俺を見ていたのは、親しい友人以外ではあいつだけだったと思う。
 


 笑顔で送り出してくれた。
 応援までしてくれた。
 だけれど、



 寂しいとは絶対に言わない。
 行かないでと抱きつかれることもない。
 良くも悪くも自立しているあいつは、俺に甘えることはないのだ。

 だから、俺は、その声なき声に応えてあげなければならないのに。

 だからといっても、留学を途中で投げだすのもあいつの本意ではないから困る。

 寂しいのと同じくらい、俺の成功を望んでいるのだ。

 そんな俺に惚れたのだ。
 何もかも捨てて、抱き締めてあげたいのに、それを許さない。



 相性が悪いのだ。
 つまり。

 そういう答えが導きだされた時、ネガティブながらあまりにもスッキリとまとまってしまった。

 そうだ。
 俺たちは相性が悪いのだ。
 仕方のないことだったのだ。
 こんなにも苦しくなる。
 望む形を相手が欲していない。
 どこをとっても、ピースが合わないのだ。






 きっと、自分がやりきって、笑ってあいつの前に出ていった時、はじめて言うのだ。
 本当は寂しかった、と。
 抱きついて、はじめて甘えるのだ。
 一晩中愛し合って、幸せを噛み締める。




 改めて難儀なカップルだと溜め息がでる。




 しかしながら、その稀に見るデレに俺はどうしようもないほど満たされてしまうから始末が悪いのだ。





 几帳面に片付けられた机の上に広げたスケッチブックを眺めると、俺は再び鉛筆を走らせた。



 相性の悪い難儀なカップルであるなら、俺は成功の道をひた走ろう。

 それが君との未来を描いていくことなのだから。





201401
セルフお題『君を描く』
いまいち
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