【d.p】
薬を飲み続けて、一季節が過ぎた。

彼女はそこでようやく、自分自身の異変に気付いた。

手足も顔もやせ細っていたものの、何故かお腹が出ているのだ。

妊娠した覚えはない。

しかしよく考えてみると、あの茶色の薬を飲んだ後、生理は一度しか来ていなかった。

苦痛がなくなったことで、生理の周期のことなど頭になかったのだ。

なら、この腹は一体どうなっている?

疑問に思っている頭の中に、薄いモヤがかかる。

不意にお腹がズキンッと痛んだ。

低く呻くも、その声に力は無い。

すでに指一本動かす力もなく、彼女は床に仰向けに倒れた姿でいたのだ。

その体はガリガリにやせ細り、お腹だけが丸みをおびて盛り上がっていた。

肌の色もすでに茶色になり、カサカサに乾いていた。

髪すら白くボサボサになっており、剥いた眼だけが僅かに命の光を宿していた。

やがてお腹が動き出す。何かが腹を突き破り、出てこようとしている。

痛みはどんどん強くなる。
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