摩天楼Devil
「……いい。どうせ、来ちゃいけなかったんだから……」


「何を言ってる?」


「き、今日は、来なくていい、って……女の人が……来るから、でしょ……」


「見ての通り帰った。何を泣いてるんだ?」


やあねぇ、いい年して女の子いじめて、と年配の女性が通りすぎた。


「おいで。目立つし」


下を向いてた私の顔を、強制的に上げる。


「妃奈。話なら、部屋で聞く」


不安そうに、彼はパシリの女の頬を拭う。


「いい、話なんかないもんッ」


苛立ちの中で、先ほどの女性の笑みと、声を思い出す。


『昔からの仲じゃない?』


『女を教えてあげたのは、私でしょ』


二人は、関係があった。

その事実が、私の心を乱す。


「も、帰る……!」


怒りながら、泣いた。


「待て。そんな状態で帰せない」


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