摩天楼Devil
「あ、そうか」と、声がしたかと思えば、空だったコップに、烏龍茶を注いだ。


そして、どうぞ、とトリュフを渡された。


――そう来たか。


「ああ、どうも」


目も合わさずそういうと、

それまで、ただ無邪気だった子が、


「お礼は顔を合わせてするもんでしょ」


と、怒る。


――はぁ? と、初めて真正面から顔を見た。


ぶぅ、と白い頬を膨らませた女の子。


なんだか、おかしくなった、ぷっ、と笑ってしまった。


「なによ、失礼な人ぉ。ああ、喉渇いた、おじさん烏龍茶」


「ああ、そういうと思って、そこ置いてあるから」


また違う客の対応に入るおじさんに言われ、ヒナはカウンターに戻る。


そこには、二つのコップがある。


「こっちにしよ」とヒナ。


が、次の瞬間おばさんが、慌てて声をかける。


「あ、待って。片方はウーロンハイでね――」


ウーロンハイは、烏龍茶を酒で割ったもの。

匂いで気付くものだが……


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