摩天楼Devil
窓から、空を見上げた。


「いい天気だ」


雲一つない、青い空。

木島さんは、そうですね、と簡単にうなずくだけ。


俺はふと、考えてたことを尋ねてみた。


「木島さんは、兄ちゃん……神崎のおじさんの息子さんのこと知ってるの?」


「いえ、あまり……」


彼はそれだけ答える。

なんだか、口元を歪めたように見えた。


不快というより、苦痛そうに見えた。


気のせいかな? と思い、更に続けた。


「実は、会ったことあるんだ。ちょっと、変わった男だったよね……。

俺さ、禁句になってたから口にしなかったけど、本当は自殺の動機が気になってる――」


んだよね、と世間話の調子で話そうとしたが、


「おやめください」と、彼に止められた。


今まで、まるで事務的、機械的に動いてきた木島さんとは思えないくらいの、強めの口調だった。


「あ、いえ、申し訳ありません。このような祝うべき日に、話すようなことではないと思いましたので……」

< 246 / 316 >

この作品をシェア

pagetop