摩天楼Devil
結局、私の心は決まってた。


「下ろさないで……」

と、隣の男性の腕に、せがむように手を置いた。


篤志さんは一瞬驚いたみたいだったが、すぐに優しく微笑む。


「おいで」と誘いながら、元パシリを抱き上げた。


「妃奈!!」


「ごめん、シュンちゃん……」


「……ッ……どういう意味だよ?」


「もう、あの頃の私じゃないよ……シュンちゃんのこと本当に好きだったよ。

でも、あの時間は終わったの。月日は流れちゃったんだよ……」


私は好きな人にしがみつく。


「この人が、篤志さんが好きなの……一緒にいたいの……“ママ達の約束”なんて、私は守れない……」


篤志さんは、シュンちゃんに聞こえないように、小さな声で、耳元で訊いてきた。


「いいんだな?」


私はコクンと頷いた。


「行こう。妃奈を呼びたかった場所があるんだ」


「うん……」


卑怯な私は、シュンちゃんの方を見られないまま、篤志さんに抱えられ、彼の横を通った。


シュンちゃんは邪魔しなかった。


――ごめんなさい……本当に、ごめんなさい……




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