摩天楼Devil
シーン、とマンションから漏れる光と、街灯だけの薄暗い中に、二人きり。


「……妃奈? 大人しいな……どうした?」


「べ、べ、別に……さ、寒いから、は、早く入りま、しょ、う……!」


「夏なのに?」と、彼は首を傾げるが、

震える声のお陰で、説得力はあったらしい。


「行こう、妃奈。お風呂用意する」


「はい……」


って、お風呂!?


「い、い、いぃえ。おき、おきつ、お気遣い、な、なく」


さらに声が震える。


「妃奈、おいで。また風邪じゃないのか」


篤志さんはギュッと抱いてきた。


――私、自らドツボにハマってない?


「違います!ちょっと、肌寒いだけ。ほら、いろいろあったし」


と、わけのわからない言い訳をした。


「は、早く、お部屋に案内してください」


って、“誘って”るみたいじゃん!


「妃奈?今度は熱いみたいだけど」


と、彼は不思議そうに、ほてるほっぺたに手を置いた。


「入ろう、妃奈。どちらにしろ、外は良くない」


案内してくれる篤志さんの背後を、1歩下がって歩いた。


ついに部屋に着くと、冷静になるよう、自分に言い聞かせた。


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