摩天楼Devil
ご一緒に、と誘うつもりだったが、彼は、


「ええ、いただきます。会社で」


「か、会社……?」


「仕事が残っているんです。お二人をお送りいたしましたら、すぐに戻らないと」


木島さんはいつもの、キリッとした真顔に戻ってた。


「はぁ……お疲れさまです……」


と、小声で返しながら、二人に分からないよう、膝の上で手を握りしめた。


――あ、篤志さんと、二人きり……


初めてじゃないのに、なんでだろう?


――不安で仕方ない――


先ほどの、妖艶に見据えてきた彼の顔を思い浮かべた。


が、すぐに首を振り、ハンバーガーとポテトのことを、嬉しそうにしてた表情の方を、思い浮かべた。


――へ、変に意識しちゃだめ。

ただ、ご飯食べるだけなんだから……!


緊張と恐怖心と戦いながら、窓の外を眺めてた。


しばらくして、あるマンションに着いた。


「ここの一室を借りてるんだ」


と、車から降りてすぐに、彼は私の肩を抱いた。


またまた、妙に意識してしまう。


そんな状態で、木島さんの運転する車は、本当にあっさり去ってしまった。


< 287 / 316 >

この作品をシェア

pagetop