摩天楼Devil
篤志さんはまた真顔になり、その顔を接近させる。


壁で逃げ場のない私は、横を向いた。

が、すぐに正面に戻された。


「君は俺のものだ。あのフィアンセもどきの野郎にそう言ったろ?」


もどき って。


「い、いえ……シュンちゃんは――」


ンッ と唸った。

いきなり、舌を入れられて。


「その名は不快だ。俺の前で呼ぶな」


どうしたら、機嫌が直るだろう?

ワラにもすがる思いで、こう言ってみた。


「あ、つし……」


「ん?」


「篤志……が好き……私が好きなのは……篤志だよ」


次の瞬間、唇を塞がれた。

激しいキスに、失敗したのかと思った。


「ふぁ……っ……あつ、し……やめ」


隙をついて、唇を離した。


「……もう一回、言ってみろ……」

と、彼も息を乱しながらも言った。


「篤志、やめ……」


「そっちじゃない。その前だ」


――その前?


「篤志が好き……」


「それだけじゃない」


「私が好きなのは、篤志だよ…」


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