摩天楼Devil
玄関のドアを開ける前に、一呼吸置いた。
――ママ、ただいま。
普段通り、普段通り。
よし。
「ママ、ただいまぁ」
靴を脱ぎ、スリッパに履き替えた。
「もう、ミヤちゃんがね~……」
喋りながら廊下を歩き、笑顔を保ち、リビングのドアを開ける。
ママが、テーブルに肘を付き、額を押さえてる。
「ママ、調子悪い――」
私が近づくと、急に立ち上がり、腕を振り上げた。
え、と思う間もなく、頬に痛みが走り、手の力に押され、床に倒れ込んだ。
「ママ?」
「これを見なさい!」
彼女は分厚い封筒をテーブルに置く。
中身は、数え切れないくらいの万札だった。
「な、何これ?」
「神崎社長が持って来られたのよ!今朝ね!あんたが帰る、少し前よ!!」
嘘。
神崎社長がウチに?
だって、木島さんは何も言ってなかった。
バカだ。
神崎社長なら、秘書や運転手は1人だけじゃないはずだ。
木島さんは今、篤志側にいる。