これが恋だとするならば・・・
「・・・・・ッ・・・。」


息を潜めて、
膝小僧を抱える腕に
ぎゅっと力をこめた。



「・・・・アッ、智里だ・・・・」




・・・・・・・智里だ・・・?
なんで名前・・・知ってるの??





不思議に思って、
声のするほうに
顔をあげると、



そこには


最近知った彼がいた。




「・・・瀬名先輩??」




嗚呼、しっかり聞けばそうだ。







≪ユウカ≫を
呼んだその声は



≪智里≫と私を呼ぶ時の
先輩の声に似ている。




「もしかして聞いてた?」




震える私の手に

先輩の大きな手が重なる。



私は、


振り払おうともしたけれど、



傷ついたようなその目が


どうしても気になって、


それどころじゃなかった。






私の目に映った先輩は、



モノクロに例えるに相応しい。




黒と白は


滑稽で
極端で
単純で


なのに


こんなに複雑で・・・






私の瞳をガチリと


捕らえて離さない。









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