マイスタイル
「何? おれに何か用あった?」

あぁ、おばさんから聞いたのか。

私が部屋の前まで行ったことを。

「今ならまだ間に合う」

「何に?」

「ホワイトデーのお返し受付の締切に」

「なにそれ」

思わず笑ってしまった。

「祥子の作ったガトーショコラが食べたい」

仂が、ぼそって言った。

「祥子の作ったトリュフが食べたい。祥子の作ったブラウニーが食べたい。祥子の作った生チョコが食べたい。祥子の作ったフォンダン・ショコラが食べたい」

私は、ただ戸惑って仂を見ていた。

全部、今まであげたやつ、全部覚えて、、

「祥子のがいい」


胸が、しめつけられた気がした。

「知ってた。二年前の、おまえのじゃないって」

「あ、れは、」

「別に、それでもくれたことがうれしかったから、ちゃんと、ホワイトデー、返そうとしたのに」

なんだか、息ができなかった。

なんで? 言うこと聞かなかったんだよ?

「だから、今度は祥子のが食べたい。やっぱり、おまえのじゃなきゃヤだ」

「――――んで、なんで、そんなこと、言うの‥‥」

あたし、このひとに、愛されてた‥‥

今、そう思いたかった。


「好きだから」

「――――ッ!」

私は、仂に抱きついていた。

今、顔を見られたらおしまいだ。

ひどい顔、してる。

泣いたとこは、もう見られたくない。

「今年は、でっかいチョコケーキな」

「‥そ、んなの、おかあさんと、、いっしょ」

「じゃあ、なんでもいいや」

「‥‥‥」

「しょーちゃん、くれる?」

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