マイスタイル


「しょーちゃん、醤油」


仂はわざと昔のあだ名で私を呼ぶ。

「“ろーくん”、そこにあるでしょ」


自分で取れ。


「届かないから言ってんじゃん。」

「手が長いから伸ばせば届くわよ」

「しょーちゃんが取ってくれたら一番早いし」


私は目の前の醤油と仂との距離をジッセンチ縮めてやった。


仂はしぶしぶ自分で取って、食事を再開する。



いつまでも言いなりだと思うなよ?




お母さんが仂に食後のデザート(本日のメイン)をふるまっている間、上に上がるとまた仂がうるさいのでリビングでテレビでも見ていた。

丁度バレンタイン特集で、女性タレントたちがそれぞれのバレンタイン経験を語っていた。


別に興味はなかったし、見るつもりもなかった。

チャンネルを変えようとした矢先の、ただ一言、グラビアアイドルのたった一言を耳にするまでは。



≪好きな人にチョコを受け取ってもらえなくって、友達にもらってもらいました≫

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