cocoa 上
「私、ずっとこうちゃんの事好きだったの!」


 突然後ろから叫び声がした。
 桃の声だった。こうちゃんと私の方を見ながら
 桃は泣いていた。


「こうちゃん…優愛じゃなくて、私を見てよ!」


 涙を流してしゃがみ込む桃。
 駆け寄ろうとすると、
 こうちゃんが私の前に腕を伸ばした。
 足が止まる私。無言でこうちゃんは桃に近付いて
 桃の肩に優しく腕を回す。

 泣きじゃくる桃に優しくするこうちゃん。
 なんだか、ちょっと心が痛くなった。
 私は静かに教室へ戻った。
 桃、こうちゃんに気持ち伝えられてよかったね。
 だけど、こうちゃんは
 部活の時に私にこう言ってきた。


「桃の事は好きだけど、恋の好きじゃねぇ。桃には悪いけど…あのあとフったんだ。」


 そ、なんだ…苦笑いしながら
 ボールを握る私。
 こうちゃんは下を見つめて
 いつもと違う表情を浮かべていた。
 ねぇ、こうちゃんは誰が好きなの?笑って聞くと
 こうちゃんは我に返って


「さぁー!!練習すっぞぉー!!」


「あ、こうちゃん!」


 逃げてくこうちゃん。ま、いっか♪
 私には関係ないことだし。
 後で桃に会いに行くかな。


「え!?帰ったぁ!?」


 吹奏楽部の部室前で唖然とする私に、
 吹奏楽部の後輩が首を傾げて


「はい。先輩なら、体調が悪いので帰ると先程帰られましたけど?」


 嘘、桃が私を置いてった?まぁ確かに失恋したら
 ヘコむよなぁ。どうしよう。
 なんて声かけたらいいんだろう…。
 夜10時にまわったときだった。
 突然私の携帯が光る。桃からの着信だった。
 急いで出ると桃は笑って私に言ってきた。


「優愛、こうちゃんと付き合ってあげてね。親友の私のために!」


 え、何言ってんの桃?
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