あきの
「おまえ、卒業したらどーすんの?」
秋野と出会って4ヵ月。
冬が過ぎて、春になって。
あたしは専門学校の2年生になってた。
「東京行きたい」
「そっか。会えなくなるんだな」
「……そーだね」
会えなくなるんだ。
秋野は、東京こないの?
秋野と離れるとか、
考えらんなかった。
「秋野さん、彼女と結婚すんの?」
彼女の話はタブー。
て訳じゃなかったうちら。
「あー、まあ、このまま行けばするんじゃね?」
「そっか」
「この年になると、別れんのもむずかしーんだわ」
「難しい?」
「そー」
「なにそれ。わかんない」
「おまえも俺ぐらいになればわかるよ」
「…わかんないよ。秋野さんは、東京行かないの?」
「俺はここから出る気はないから。」
「…うん」
「おまえが残るんだったらさ、俺は」
「なに?」
「なあ、東京行くなよ」
「行くよ」
「…だよな」
秋野は少し寂しそうに笑ってた。
あたしは、別に東京に行かなくてもよかった。
男が理由で
今さら進路を変えるなんて、
カッコ悪いと思ってた。
本当は、秋野にもっとひきとめてもらいたかった。
わがままで、小心者で、プライドが高いんだ。
あたしは。
それからも普通に遊んでたし、
秋野と連絡がとれなくなるとか、
想定の範囲外だった。