モノクロ*メランコリック
私は子供達を眺めていた目線をそらして、目を伏せる。
「…小学、三年生の頃に。私の両親がよく喧嘩するようになったの。それで、そのときのお父さんが、よく私に怒鳴ってたの。『美愛子』って」
そのまままぶたを閉じて、ぎゅっときつくつむる。
…何かを察したのか、隣で竜崎くんが息を飲んだような気配がした。
「…その、声がね。怖くて仕方なくて…男のひとに、『美愛子』って呼ばれるのが恐ろしくなったの。女のひとも、あんまり苦手。大きな声で呼ばれたら、びくってなる」
思い出すのも嫌な、記憶。
本当は、怒鳴られただけじゃなかった。
私はなんにもしてないのに、叩かれたり、物を投げられたりしていた。
それ以来、トラウマとして私の中に残ってる。
シロの母親が私に合鍵を渡してくれたのは、そんな私の父親から、逃げ場を作ってあげるという意味もあったんだ。