シーサイドブルー
* * *


ザザン…ザ…ザン…
規則正しいようで決してそうではない波が寄せては返す、そんな波打ち際を見つめ、彼はゆっくりと砂浜に座った。


「隣、空いてるよ?」

「分かってる。」


少し距離を置いて、隣に座る。
波の音だけがただ聞こえる。


「恋したことある、って質問だっけ?」

「…そう。」

「あるよ。多分俺の人生で一番好きな人だった。」


…何を言えば良いのだろう。上手い相槌だって思い浮かばなければ、どんな表情をして良いのかも分からない。
〝だった〟という言葉がやけに引っ掛かる。


「もういないんだけどね。」


何でもないことを話すかのように淡々とそう海に向かって呟いた。


「事故だよ。信じられなかった。でもいない。それだけが事実。」


短い言葉がポンポンと投げられて、上手く受け取れない。


「そしてその半年後、俺もこのザマだ。」

「どうして…死んだの?」


言葉を選ぶ余裕なんてなかった。
純粋にそれが知りたかった。





「あの崖から飛び降りた子どもを助けたから。」

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