シーサイドブルー
「ねぇ…凪。」

「ん?」

「私、恋がちょっとだけ分かった気がする。」

「んー?それは期待して良いってことなのかな?」

「…そ…れは分かんないけど…。
でも、〝嫌いじゃない〟は私にとって〝好き〟の始まりだったよ。」


私の嫌いじゃないところを見つけてくれた凪を嫌いじゃないと思った。
それが〝会いたい〟への始まりだったから。


海の青が消えていく。哀しみの青を、夕日がオレンジに染めていく。


「始めるなら、海風と。」

「始めるなら…凪とが、いい。」


一人じゃ自分を好きになれない。
でも自分は自分をやめられない。
だから…


「凪に私を好きになってもらいたい…のは、私が私を好きになりたいから、なのかな?」

「随分ちゃんと覚えてるんだね、俺の言葉。」

「だって大事だもん…。」

「大事にしてくれてたんだ。…そういうとこ、妙に可愛いよね。」

「別に可愛くはない!」

「自分じゃ分かんないんだよ、自分の良いとこなんて。そうでしょ?」


それには頷いた。だから凪に見つけてほしい。


「手、繋ごうよ。」

「…うん。」


私は差し出された手をぎゅっと握った。
風が優しく、私達を包んでいた。


*fin*

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