白いツバサ

「アクア様もアクア様です! 勝手に街の外に出られては困ります!」

「ごめんなさい、外の景色も見てみたかったの」

「それなら私をお連れ下さい! 遠くに行かれては、お守りすることも出来ません!」

「うん、ごめんなさい……」


(この人は、一体何者なんだ……?)


少年は、心の中でつぶやく。


(会話からして、この子の護衛の人なのか?)


「こんな底無し沼だらけのとこ……もし落ちたらどうするおつもりですか!?」

「そのときは、彼が助けてくれるって……」

「その様な言葉を真に受けて……」


アクアの言葉に、ファイアリーは大げさに額に手を当てた。


(やっぱり……貴族とは住む世界が違う)


少年は、心を開きかけた自分にも苛立ちを覚えた。


「さて、少年……」


不意にファイアリーが口を開く。


「この落とし前はどうつけるつもりだ? 返答次第ではタダでは済まさぬぞ!」


少年の気持ちをよそに、ファイアリーは肩を大きく回した。


「さっきから身勝手なことばかり言って……」


その言葉に、少年はゆらりと立ち上がる。


「落とし前とか何なんだよ! 僕は、やってないって言ってんだろ!」

「……それが、貴様の答えということだな!」

「どうとでも受け取れよ!」


怒りのままに叫ぶと、少年は岩から飛び降りた。

そして、鋭い目でファイアリーを睨む。


「いいだろう……」


負けじと、ファイアリーも睨み返す。

辺りに緊迫した空気が流れた。


「やめて、2人とも!」

「大丈夫です、すぐ終わらせます」

「そうはいくか!」


2人は、拳をあごの前近くに置き戦いの構えを取る。


「貴様の罪、粛清(しゅくせい)してやる!!」

「勝手なことをー!!」


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