白いツバサ

『冷血の眼』

ぬかるんだ街道を歩く2つの影。

パイロとボルケーノだ。

2人の姿は、次第に大きく、はっきりと見えてくる。

それに伴い、自分の中で高まっていく緊張。

震え出す体を、少年は抑えることが出来なかった。


「どうしたの? 大丈夫?」


息が浅い少年を心配し、アクアが声をかける。


「大丈夫──」


そう言おうとするが、それは声にならず、もはや強がることも出来なかった。


「はい、ちょっとゴメンよ」


パイロとボルケーノは、ファイアリーたちを素通りして少年の前に立つ。

その姿、正に仁王立ち。


「叔父さん……叔母さん……」

「あら? あなたの叔父様と叔母様なの?」


少年の言葉に、アクアは胸の前で『パン!』と手を叩いた。


「こんにちは」


2人に微笑むアクア。

パイロは、そんなアクアを一瞥(いちべつ)すると、おもむろに少年の腕をつかんだ。


「痛い!」


ねじり上げられる腕。

その激しさに、思わず口から悲鳴が溢れた。


「ちょ、ちょっと、何をなさってるの!? 痛がってるじゃない!」


慌ててアクアが割って入る。


「お嬢ちゃん、これはうちの問題だから大丈夫なのよ」


ボルケーノは、アクアに微笑んだ。


「で、でも……」


その間にパイロは少年を引きずっていく。

そして、一団から少し離れたところまで来ると、無造作に放り投げた。


「うあっ!!」


ぬかるんだ街道の上に倒れる少年。

パイロは少年に近付くと、髪をつかんで引き起こした。


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