甘くて切なくて、愛おしくて



「..さん?とうさん!!」


はっと我に返ると不思議そうな顔をして俺を見つめるユウキが視界に入った。


「なんだ..どうした?」

「どうしたじゃないよ、お鍋!」

「うわっやべっ!」


慌ててガスの火を止めた。


「どうしたの?何かあったの?」

「何でもねぇよ、お前が心配するような事は何も..」

「そういえば今日蝶花もおかしかったんだよな」

「蝶花さん、だろ?」

「いいだろ?やっぱり“さん”付なんて出来ないし。だって今日夕方会ったんだけど、あいつ泣きっぱなしだったんだよ?絶対に虐められて泣いたんだって」


腕を組みながら考えるユウキに視線を向けてから再びガスに火を付けた。蓋を開けてみると魚が程良い色に染まっている。一緒に煮た大根に串を刺してみる。なかなかのでき具合に安心する。危なかったな。


「それ..僕たちの分しかない?」
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