甘くて切なくて、愛おしくて
あの人、と聞かれても一体誰の事なのか見当もつかないあたしはそのまま美香子の言葉を無視して味噌汁を飲む。
「ちょっと聞いてるの?」
「うん、一応。でも美香子が一体誰の事を言ってるのか分からないから」
「ばかね、佐野さんに決まってるじゃない!あの人、あんたばっかりに質問したりしてさ」
「だって、今日聞かれたトコ、あたしの担当箇所だったし。だから特別そういうのはないと思うけど?」
いきなり言い出すかと思えば、なんていう事を。
大体、あんなカッコいい人があたしみたいな一般人を好きになるわけないじゃない。
こんなところで話に出される佐野さんが気の毒。