甘くて切なくて、愛おしくて
今でもここでの暮らしは楽しいし、充実した生活をおくれている。
何よりも、あの親から離れられた事が一番嬉しかった。
身勝手で、あたしの事なんか何も考えてない二人。
そんな二人の口癖は最後まで
“言うとおりにしなさい”だった。
お互いに別々の人がいるのに、離婚はせず、
何かあると必ずあたしの事で喧嘩していたあの人達は
あたしの進路の事に関しては同じ言葉を常に口にしていた。
言うとおりにしなさいって?
「そんなの、無理に決まってるじゃない」
あたしの人生はあたしだけのもので。
あたしの決心はあたしだけのもの。
だから誰にも邪魔をされたくなくて、この場所に来たのだ。
今でも思い出すだけで腹が腹が立ってくる。
「何がムリなんだ?」
聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると、沢城さんが立っていた。