100日愛 [短]




ぼんやりと、手の下にある時計を眺める。



―――『はいっ、お寝坊さんの夾くんにはこれねっ!』―――


薫が、俺にしか向けない笑顔でくれた19回目の誕生日プレゼント。


いかにも薫が好きそうな趣味のものだったが、翌日からはちゃんとこれを使用していた。


それから夾は苦手な朝を克服した。


何より、毎朝この目覚まし時計の音に必ず触れられることが素直に嬉しかった。


同居をまだ始めて無いときでも、毎朝彼女がいてくれる気がしてた。

それは……今もまた変わらない。




そういえば今日は、一回も薫に触れなかったな…。




ついさっきまで見ていたビジョンを思い出しながらふと思う。


ケンカしても、仲直りの際には必ず抱きしめていた。

事故の時も、血だらけの薫に触れていた。



あの時は必死だった行動が、今の自分を少なからず助けていると思うとなんだか可笑しい。


それにしても、このようなことは滅多に少ない。

第一、出逢いの場面なんて一番始めに見るようなものなのに、今日が初めてだなんてのも附に落ちなかった。



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