ネコ彼。(完)
 

「……貸して」


そう言って、哲平はネックレスを手に取る。


慣れない手付きで、私の首にネックレスをつけてくれる。


くすぐったい。


「―――首輪。……みちるはオレのもの、って印」


「へ?」


首もとに柔らかい唇の感触を感じた次の瞬間、チクリとした痛み。


私の首もとから顔を上げた哲平と目が合う。


「―――…みちるが好きだ」


「―――!」


聞きたかった言葉。


嬉しくて嬉しくて、涙が次から次へと出てくる。


止めどなく流れる私の涙を、哲平の指が拭ってくれる。


「泣き虫」


クスッと哲平が笑った。


何か悔しい。


「誰の…せいだと…っ」


「―――みちる」


哲平は私の口答えを制するように、甘い口調で私の名前を呼ぶ。


にっこりと笑った後。


哲平は、噛みつくように私にキスをした。

 
< 28 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop