Quiet man
「______ どうしたん?」




右手にお箸を持った彼女の

テーブルに置いたままの

左手を手に取る。




「帰る途中の縁日でさ、

あんまりキレイなんで・・

つい・・買っちゃった。」


「縁日?? 露店で?」


「うん」


「ズルー。

あたしも行きたかったー。」


「うん」




何をくれるんだろうと、

クスクス笑って裏返した

パーの手をまだ俺に預けてる。

右手はまだ豆腐をツツいてた。



「______!?」


「似合うと思わない?」



薬指の重さに箸を置き、

その指を見た。

そして次に

俺の顔をポカンと見つめる。

"どう?"って顔の俺を見て


さあ、何て云う___?


「ウソ」

「うん、ウソだよ。」



空かさず云ったが

つい吹き出しちまった。

"今の笑うトコ?"みたいな、

ナギの困惑顔。

俺は指輪の嵌った手を取り

その甲にキスをした。




「結婚しよ。」




目を見開いて

口を軽くパクパクさせてる。


どうなの___?



「・・・ウン、わかった。」



ナンだよそれ・・! 


フツウそう云う時って

"はい"とか、

"喜んで"じゃない?


って・・笑ったけど、

まあいいや、

ナギらしくていい。



俺はやっと

水色の小箱をテーブルに置き、

安堵の溜息を吐きながら・・・。

その手と指を組み合わせてる。




「これからもヨロシク」


「もう・・!

・・・・・フフ。」




・・勿論、

今夜も含めてってコトだから。







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