Quiet man
そして1時間位たっただろうか

彼もそろそろ出勤時間なので、

"引っ掛け"る時間をちゃんと

考えてお店を出て行った。



「今日はありがとう。」


「・・この目で

一度見たかったんだ。」


「何を?」

「"蜃気楼の花"・・。」


「・・・・・!?」



なんて自然に抱きつくのだろう。

ぼけっとしてる間に・・腕の中。

あ・・また、あの香りがした。


「・・なんで、結婚するんだ?」

「・・・!」


ドン! 胸板を慌てて押し退ける。

彼もさすがに無理強いはしない、

何で・・そんな目で見下ろすのか。


「悪い」

「・・・。」



( ・・・営業に決まってる。)



彼の吹かれる後姿を一瞥

しながら店の中へ戻った。



最後にして調子を狂わされた

あたしはナンだかズルズルと

時間だけが過ぎた気がしていた。


「じゃ、また遊びにおいで。」

「うん」


皆と別れを惜しみながら

待っていたタクシーへと乗った。

家に着くと神足さんはまだ

帰ってなくて、留守電を見る。


ピッ!


『ヨウちゃん達と呑んでるから

明日の朝帰る、戸締りだけは

しっかりしといてね。じゃ。』


プ ________________


珍しい、朝帰りとは。

だったら・・あたしもさっと

お風呂に入って寝よ。


だいたい9時ぐらいには

戻って来るだろうと思いながら。


明日の事なんか予想もせずに。




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