Quiet man
此処は都内にあるスタジオの
喫煙コーナーだ。そこで不味い
煙草を揉み消した所だった。
「・・・。」
切った携帯を暫く眺めながら
俺は
その向こうの彼女を想像した。
あの様子じゃ、解ってる筈・・。
俺はあの朝、"迎えに行こうか"
と・・彼女に聞いていた。
すると、
『ううん、大丈夫やし。』
そう云って・・その晩にコレか。
週刊誌に写った彼女はあくまで
一般人だと云うので軽い目隠し
が入っていた。だが・・左手だ。
サファイア・カットの俺の贈った
指輪がしっかりと写ってたんだ。
それを見て
何故か無性に腹が立った・・。
何なんだ・・ナギが悪いのか?
それともあの男か?
その程度のダイヤなんか
見えなかったってのか?
それとも・・いや、解らない。
もう俺自身が解らねえよ・・。
いや・・違う。
俺達が付き合い出してからの
出来事に・・疲れているのは
多分、俺の方なのかもしれない
って・・思ったんだ。
彼女が悪い訳じゃないのに、だ。
俺はやっぱり、結婚には向いて
いないのかも知れないとさえ
思えてきたんだ・・。
「バカ云ってやがる」
・・今のは俺自身への言葉だ。