Quiet man
美津子が俺に渡したグラスは
まだローテーブルの上にあった。
それを手に取らず、ヨウちゃん
はナギを手招いて匂いを嗅がす。
「なんでこんな事・・。」
「俗に云う"レイプ・ドラッグ"
って奴だな。恐ぇぇ女だね。」
「レ・・! イプ?」
海外などでは身を守る為に、
自分の飲み物にクスリを
入れられていないか調べられる
携帯用の"検査キット"が売り
出されるほどその犯罪は多い。
「効いてる間、記憶が無くなる
から気付かない事もあるって。」
「・・・大丈夫? ほんまに
病院に行かんでもええの・・?」
ベッドまで運ばれた俺は心配顔
で訊ねる彼女に肯いて微笑んだ。
「ラクにしてて」
ナギがタオルに巻いた保冷剤を
俺の首の下に当ててくれ、
そして手を握った。
「痺れは? 握り返してみて。」
「もうない」
「大丈夫やね・・、良かった。」
ほっとした顔で俺の額の髪を撫
で上げる、それが心地いいんだ。
「吐くだけ吐いたから良かった
んやわ。・・あの時、気付いて
あげられれば・・、ごめんな。」
「あれは仕方ない」
俺は彼女の手を握ったまま、
自分の頬に当てて呟いた。
「俺の自業自得だ」