Quiet man
「ううん、特別好き。」

「・・・とくべつ?」

「そう、神足さんは特別やから。」



今度はホッペにキスをされ、

思わず手を放していた。



「じゃ、今度こそおやすみ。」



彼女はスルリと抜け出すと

自室へ戻って

行ってしまうのだった・・。



酔いなんか、

とっくに醒めている。

軽くあしらわれた感はあった。



______ だが、特別?

ナギの中で俺は

どうスペシャルなんだ?



その言葉は当分、

神足を悩ます事となる。


(こんな事、今まであったか?)


たった

二文字が伝えられないなんて。

毎日見る

和祇の笑顔が苦痛にも思える。

そのクセ、彼女が居ない部屋に

帰るのは嫌なのだ。





( タマには迎えに行ってやるか)


その日、仕事を終えて

携帯を見ていた。

そろそろ

彼女の方も仕事が終わる時間だ。


店の近くで

車を止めるとそこから歩いた。

"ファタ・モルガナ"から

最後の客がナギに見送られて

いる所に出くわす。



「ねぇ~、

オヤスミのキスぐらいしてよ。」




< 79 / 254 >

この作品をシェア

pagetop