キオクノカケラ

そしてポンポン、と私の頭を撫でながら、

諭すような口調で耳元に囁いてくる。


「大変だったな…よく頑張ったよ。
お前も、結城も……」


隼くんはさらに私を強く抱き締めると、自分の額を私の額に当てた。

ごつん、と鈍い音がしたと思ったら、目の前には隼くんの笑顔。


「大丈夫だって!
そう簡単には死なねぇよ、結城は」


一点の曇りもない、爽やかな笑顔。

彼は決して慰めで言ってるんじゃない。

本気で、結城くんのことを信じてるんだ。



それは、私が一番信じたくて、聞きたかった言葉かもしれない。

私は勝手に流れていた涙を袖で拭って、力強く頷く。

それに彼も頷くと、急いで看護士さんの元へ走って行った。


私はその後ろ姿を見送りながら、そっと手を胸の前で組む。


そして、手術中の赤いランプをじっと見つめた……。


< 131 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop