キオクノカケラ
車に乗って約1時間。

ようやく着いたようで、そこそこ大きな家の前に車が止まった。


「ほら着いたよ。さっさと降りな」


叔母さんはどこまでも私に冷たくいい放つ。

内心いらっとしながら私は素直に車から降りる。


家を見上げると、ホントにそこそこの大きさ。

一般の家より一回りぐらい大きい感じ。


バン、と車のドアの閉まる音が聞こえた。

いつまでも玄関の前に立っていたら

また怒鳴られるのは火を見るより明らか。


そうなる前に家に入ることにした私は、
ドアのぶに手をかけた。

その時…



ガチャン


ゴンッ


勢いよく開いたドアは、すぐ側にいた私の額に

ニブイ音をたてて思いっきりぶつかった。


「っぅ~~~~!!!!」


人間っていうのはホントに痛いときほど声がでないもの。

あまりの痛さに声が出ない私は、

額を両手で押さえしゃがみこんだ。



「そんなとこでしゃがんでるとジャマだよ。オバサン」


「なっ!!」


オバサン?!

ふいに頭上から聞こえた声にカチンときて、声のほうに目線を上げると、

まだ7歳くらいの男の子と目が合った。


ドアの開いたほうにいるのを見て、

この子がドアを開けた張本人だと悟った私は、一言注意しようと口を開きかけた瞬間


「ジロジロ見んなよオバサン」


上から見下すように言葉を投げ捨てられた。


またオバサンって…!


私は立ち上がると、腰に手をあてて男の子を見下ろす。

そして強めに言葉をかけた。


「オバサンって私のこと?」


「おまえ以外にだれがいんだよオバサン」


すぐさま言葉を返す男の子。


思わず頬がひきつる。



可愛くない子…



小さな呟きは男の子には聞こえなかったようで、

どこか違うところを見つめている。


その視線を追ってみると、車の鍵を閉めている叔母さんがいた。


「おばあちゃんっ!」


男の子はそう叫びながら叔母さんの元へと走っていった。


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