キオクノカケラ
「そんなの…そんなの認めないわ!!」


叔母さんの叫び声と共に、バンッという机を叩く音。

それに合わせて飛ぶ何枚かの紙。

キッと私たちを睨む叔母さんの目は、今まで見たなかで一番怖いかもしれない。


あ……目が合っちゃった…。


そんなことを考えていたら、運悪く視線がぶつかってしまって、私は思わず目を背けた。


「認めないも何もないね」


この言葉に、視線が結城くんに移されたのが気配で分かる。


「何度も言うけど詩織はオレのものだ」


「オレのものである詩織のものはオレのものになる権利がある」


得意気に笑いながら、そうだろう?と章さんに目配せすると。

返事をしながら確かに頷いた。

その事に叔母さんの顔はますます鬼の形相になっていく。


「でも、私たちはれっきとしたこの娘の血縁よ。この娘の母親は私の姉なのだから」


「ああ、そうだね」


「それにこの娘の両親は他界。他に血縁はいない」


「…確かに」


「えっ……?」


他界……?

誰が?

『両親が』……?


そんな…


「うそ……でしょう?」


自分でも驚くくらい声が震えたのがわかる。

手も、震えが止まらない。


「ねぇ、他界ってどういうこと……?」


「…………」


「…なんとか言ってよ」


「…………」


「結城くん……っ、章さん…っ!!」


何も言わずに俯いている二人に、つい声を荒らげると。

結城くんがゆっくりと顔を上げた。


「っ………」


そんな彼と目が合うと、私は何も言えなくなってしまった。


結城くんにそんな哀しそうな表情されたら……

何も言葉がでないよ……――。


私まで言葉に詰まってしまって、やや視線をおとすと。

この場に相応しくない、小さな笑いが聞こえた。


前にも聞いた、嫌な笑い声。

だんだんと大きくなるその声に顔を向ければ。

案の定、

叔母さんと目が合った。


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