キオクノカケラ
「はい、確かにお預かり致します」


「ああ、頼むよ」


にこにこと微笑みながら書類を受け取る女の人と。

それに口角だけを上げて微笑み返す結城くん。

一体今、何が起きてるのかいまいち理解できていない私は。

結城くんと女の人の顔を交互に見比べることしかできなかった。


そんな時、呆然としている私に気づいたのか、

結城くんは優しく微笑むと、私の前に手を出した。


「さて、手続きも終わったし」


「帰ろうか」


「うん」


私は、こくりと頷いて微笑み返すと。

目の前に出された手にそっと自分の手を重ねた。


すると、背後から黒いオーラを感じる…ような気がする。

これ、前にもあったような、なかったような……。

恐る恐る振り向けば、表面上では笑顔な章さんから、確かに黒いオーラが放たれていた。


「あ…章さん?」


なんでそんなに黒いオーラを放ってるんですか?

なんてとてもじゃないけど聞けるはずもなく、名前を呼ぶのが精一杯。


「どうかしましたか?」


それはこっちの台詞ですよ!

さっきから目が笑ってないです!!

心の中でそう突っ込みながら、無理矢理笑顔をつくってみせても。

章さんの黒いオーラは消えることない。


「えーと…、えーと……いえ、何でもないです」


「そうですか。
なら帰りましょうか」


「は、はい!」


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